1前眼部
 前眼部病変による視力障害は角膜病変によるものが中心であるが、現在角膜移植待ちの患者は日本で2万人いるとされ、現在の角膜移植では数からいって全く及ばない。すでに坪田一男教授らは一部世界にさきがけて、角膜再生医療をほぼ確立し、しかも従来の角膜移植では治療が不可能であった難治例に対し、角膜移植の代わりに羊膜移植と角膜幹細砲移植を併用した角膜再生医療を行い優れた成績を出している(Tsubota K et al:N Engl J Med 340:1697,1999)。この角膜再生医療が確立すれば角膜移植を待つ必要はなくなる。
この技術の問題点は、角膜の上皮・実質・内皮および角膜幹細胞をGMP(人に使える基準を満たす製造法)により量産し、再生医療技術を確立することと第二は第2、第3世代としてバンクを作るか、免疫拒絶のない誰にでも使える角膜および角膜幹細胞の作製である(後述)。角膜再生医療は本プランの先導部隊の役割を果たす。

2 後眼部、特に網膜
 網膜再生が最大のテーマである。高橋政代博士らは世界で初めて神経幹細胞の網膜移植に成功した(Takahashi M et al:Mol Cell Neurosci 12:340,1998ほか)。すなわち海馬から取った神経幹細砲をラットの硝子体腔内に注入したところ、その神経幹細胞が網膜へ遊走・生着し、各種網膜細胞様細胞に分化し、神経繊維も再生することを認めた。さらに、成体ラットの場合は網膜になんらかのファクターを加えておかないと幹細胞の生着が見られないこともわかった。しかし、現段階では網膜に生着・分化した綱膜細胞の機能、すなわち光を認識できることを認めるまでには至っていない。現在、この解決のために幹細胞のソースなどを検討しているが、移植された幹細胞が網膜細胞の機能を持つようにすることが最大の課題である.。本技術は網膜色素変性症や加齢黄班変性症などには十分応用可能であるが、糖尿病・ベーチェット病などによる失明に関しては、医用工学を用いた人工眼の方が好ましいかもしれない。



項目に戻る  次のページへ

Copyright 2004 Mizushima. All right reserved.